ダニエル・ポントローさん in 箱根
箱根展示室が、一年ぶりに開館しました。
再開の第1回めには、フランス人作家、ダニエル・ポントローさんの個展です。陶オブジェ、平面作品など約80点。
2つ並んだ大きな石のような作品、詩が刻まれた陶片などを、一階、二階、庭、全体を使って展示しています。
Daniel PONTOREAU/箱根菜の花展示室
2012年6月15日(金)〜30日(土)
Daniel PONTOREAU
開館時間 11:00〜17:00
休館日 水曜日
入場料 500円(コーヒーor抹茶+お菓子付)
一昨年の初夏、ギャルリももぐさから届いた案内状で、初めてポントローさんの作品を見て、どうしても会いたくなって多治見へ向かった。新しい美術館を作ろうとしていた私は、ポントローさんを小田原へお呼びした。その時通訳をしてくれたのは、彼の古い友人である陶芸家の小川待子さんだった。二人を案内して、箱根にある改装前の建物に行くと、まだ内装に手をつけていないその場所を、彼はとても気に入ってくれた。
その場で、この小さな美術館での展示を約束してから二年が経った。
今回のダニエル・ポントロー展を前に、小川待子さんを訪ねた。
二人の出会いは、40 年近く前。フランスで学んでいた小川さんと親交のあった陶芸家ベルナール・ドゥジョングさんのアトリエで、同じ薪窯に作品を入れた時。磁器で作った球体の、彼の作品のことは今でも覚えているそうだ。
その後しばらく交流は途切れたが、彼が来日した時に再会し、再び交流が始まった。
ブランクはあれど、若い時―これから作品を作っていこうという時期に知り合った仲間であり、すぐに出会った頃へと戻れたのだという。
現代美術作家であるポントローさんと、工芸の世界にいる小川さんとは、同じ土を使っているとはいえ、世界が違い、距離がある。
けれども感覚的に共感するところがあるのだと、小川さんは手元にある作品を見せてくれた。
それは、石のように作られたものであり、刻まれた言葉と、時間、置かれた空間から生まれてくる世界がある。
ポントローさんの作る、一つ一つはパーツであり、それは同じものを再び作れるものもある。そしてそのパーツは、空間との関係性の中で息づいてくる。その時それらは、パーツではなくなり、全体として息を吹き返すのである。
過去に作ったものであっても、空間を変えることで新しい作品になるのだ。
今、箱根の菜の花展示室では、彼の作品が、静かに主の到着を待っている。フランスから、新しい作品を携えてやってくるポントローさんの手によって、展示室の空間の中に、新たな世界が生まれてくることを、私も楽しみに待ちたいと思う。
2012 年 6 月 菜の花店主 たかはしたいいち
お知らせ
6月の企画展は、箱根菜の花展示室で開催致します。
会期中、うつわ菜の花はクローズとなりますので、よろしくお願い致します。
箱根菜の花展示室は、箱根湯本駅から徒歩10分。和菓子菜の花の新店舗、『箱根・ルッカの森』(写真)のすぐそばです。
6/15〜6/30 ダニエル・ポントロー展
箱根菜の花展示室のHPはこちら
http://tenji.nanohana.co/
森岡成好一門 8人展
土曜日から始まりました。
市川孝さん、上野剛児さん、加地学さん、境知子さん、中本純也さん、中本理詠さん、畠田光枝さん広瀬寛子さん。
北は北海道、南は石垣島まで、それぞれ離れた場所で独立している皆さんが、菜の花で久しぶりの再会でした。
楽しそうに話しているのは、窯のこと土のこと作品のこと。やきものが好きでたまらない気持ちが伝わってきます。
それぞれの作風の、力強い作品が並び、森岡成好さん由利子さん夫妻の心が、しっかりと受け継がれていることを感じる展示になりました。
森岡成好の弟子たち8人展 市川孝・上野剛児・加地学・境知子・中本純也・中本理詠・畠田光枝・廣瀬寛子
2012年5月19日-5月27日
19日・20日は作家在廊予定
OPEN 11:00-18:00
定休5月23日(水)
5月6日イベントご案内
ガラス5人展、最終日の6日、旅する珈琲焙煎人中川ワニさんが来店、珈琲を淹れてくださいます。
菜の花の新商品、箱根・森のバウムを添えて、一杯500円でお召し上がり頂けます。
5月6日12時〜17時
是非、お越しくださいませ。
ガラス5人展 安土忠久・荒川尚也・おおやぶみよ・辻和美・能登朝奈
4月28日(土)~ 5月6日(日)
O P E N 11 : 00 ー 18 : 00 定休5月2 日(水)
菜の花の茶房を始める28年前、安土さんのグラスと出会い、ギャラリーを始めた矢先、ニューヨーク帰りの辻さんと会った。沖縄でみよさんと知り合い、泡盛を酌み交わした。丹波ではずっと気になっていた荒川さんを訪ね、酔っ払って迷惑をかけた。昨年出合った能登さんは、何年も前に手に入れたパート・ド・ヴェールの作品の作り手だった。出会いは作品が先だったり、人が先だったり、順番はさまざまだが、自分にとって好きな作品を作る人は、やっぱり魅力的な人なのである。どうしてかなあ。
2012年4月13日 菜の花店主 たかはしたいいち
ゼロからの服作り
谷由起子さんのラオス展。たくさんのお客さまにいらして頂いています。
ゼロから、とは、綿花の種を蒔くところ、蚕の卵から育てるところ…に始まり、紡ぎ、撚り、草木で染め、織って布にして服を縫う。服を縫う糸に至るまで、すべて自分達でこなし、仕上げているということなのです。
服の縫い目は本当に美しく、どれもリバーシブルで着られるような仕上げで皆さん驚かれます。
ぜひ、触れて、着て、感じて頂けたらと思います。
ラオス 谷由起子の仕事。0からのものづくり。
4月7日(土)~ 4月15日(日)
谷さん在廊日 7 日. 8 日. 13 日. 1 4 日. 1 5 日
O P E N 11 : 00 ー 18 : 00
定休4 月1 1 日(水)
私は、ラオスの現地で一緒に働いている人たちのことを、勝手に世界無形文化財「山村の女」とよんでいます。彼らとの付き合いも、もう1 2 年になりますが、今も彼らの動き、知恵、力にほれぼれする毎日です。今回は「ゼロからの服作り」に力を注ぎました。桑畑を整え、蚕に卵を産んでもらい、養蚕し、糸を引き、撚りをかけ、染色し布を織る。その布を、裁断し、縫製し、服という形にする蚕の卵作りから全ての工程を自分たちで行い、またそれは、すべて、手の仕事です。特に縫製に注目していただきたいと思います。手縫いです。一目で手縫いとわかる手縫いではありません。細かく美しく力のこもった縫い目です。こんなことをできる人たちが今世界で一体どれだけいるのだろう、この人たちの力も、世界中の多くの人が失くしてしまったように、そのうち消えていくのだろう、ああなんてもったいないのだろう、どこかに道はないのだろうか、そう思うと悔し涙が出てきます。2 0 1 2 . 3 . 2 0 H P E 谷由起子
谷さんの悔し涙が私の心の奥底までひしひしと伝わって来る。力強いラオスの少数民族の手の仕事が、今まさに終わってしまうかもしれないところに、谷さんが直面している。私も以前訪ねた、中国国境から3 0 キロのルアンナムター。中国のプランテーションに押されて、綿畑も減ってしまい。尊い手仕事が、賃労働にとって代わられようとしているのだ。私にできることは、自分が手に取り、身にまとい、つかうことでその実感を伝えること。ギャラリーで企画し、皆様の手に手渡すことだけです。そして、つかい手である貴方が感じたことを、つくり手に伝えたい。レンテン族の藍の布。ズボン。シャツ。ずだ袋。クロタイ族のシルクのショールや服。元気をあたえられ、その美しさにほれぼれする。身にまとっていると、ラオスの少数民族の人達の人なつっこさが思いおこされる。その人達の手の仕事。「未来は過去をさかのぼるところに在る」。どうも3. 1 1以降、特に強くそう思うようになっている。どうか、ラオスの手の仕事を、今一度、あらためて、貴方に見てもらいたい2 0 1 2 年 3月 菜の花店主 たかはしたいいち