高瀬省三展 彫刻

2019年7月6日.土―7月14日.日
定休日10日 OPEN 11:00 ―18:00
6日(土)高瀬省三氏の奥さま 久子さんが在廊されます。
高瀬省三さんとは、大磯の「桃の家」で引き合わせてもらった。桃の家は、料理のさわやかな店だった。そこで何度か一緒に食事をした。高瀬さんは、夕方になるとフルートを吹くような、静かな1人の時間をもつ面と、友達と賑やかに過ごす面があったそうだ。日本画家として活躍していたが、60歳を前に末期ガンの宣告を受けた。

「都心から大磯に移り住んで十年、浜辺の散歩が日課になった。
あるとき、大型台風で、大量の流木が浜に打ち上げられた。
ごく自然に、拾って、デッサンし、造形を試みるようになっていた。
流木を手にしたとき、作りたいものが見えてくるのが面白かった。」
「風の化石」あとがきより

命の限りを見つめ、濃密な時間を過ごした最晩年に作られた彫刻25点。それを収めた作品集が、筑摩書房から出版されたその年、高瀬さんは亡くなった。彼の住んだその家を借りることにしていたので、何回も通って、流木をあつかった彼のアトリエもすごく気に入っていた。それから10年後に、平塚市美術館で回顧展が開催され、その後、その作品の全てを菜の花が引き受けることになったのだった。茨木のり子さんの詩集のうち3冊の表紙絵を描いていた。その時の写真を担当した坂本真典さんが、高瀬さんの流木の作品に魅かれて、「風の化石」が生まれた。その縁で高瀬さんの作品集「風の化石」には、茨木さんの序文が寄せられている。

円空は、かつて、雑木のなかから佛像を彫り出した。
木っ葉佛など、今思い出してもなつかしい。
高瀬省三さんは、大磯の浜に打ちあげられた
流木を拾ってきて、少々の手を加えることによって、
ふしぎに聖なる造型を果している。
作品を見ていると、焚火にもされず、
新たに息を吹きこまれ、命の最後の所を得た、
流木たちのよろこびと安堵のおもいが、
ひしひしと伝わってくる。
茨木のり子「風の化石」序文より

ぜひ、作品を見に来て味わってください。
そして、うつわ菜の花の協力で再出版された「風の化石」 が、
300冊ほどあります。お手元に置いて下さい。
2 0 1 9 . 6 . 2 5 髙橋台一

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25. 6月 2019 by STAFF
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