井上有一の書
2017年6月15日.木―6月21日.水
OPEN 11:00―18:00 会期中無休
・5月、台湾の故宮博物館に行った。
何よりも顔真卿(がんしんけい)の書に会えると楽しみにしていたのだが、残念ながら、今回の展示では取り上げていなかった。画帳を見たが、それでも実によかった。
顔真卿は、僕にとって書を好きになった始まりの人である。顔真卿は唐の後期の玄宗皇帝の郡の長であった。安禄山の乱には息子や孫たちを戦争におくって、悲しみ、悶えた人でもある。そんな 思いの書をかつて、NHKで見た記憶がある。それは有一を知る前のことだった。有一に出会って顔真卿の臨書を果てしなく書いていたことを知り、そんな形で顔真卿がまた自分に巡ってきたのである。そして有一は顔真卿の臨書をしたからこそ、一文字一文字が生きているんだと思うようになった。唐代きっての書家、顔真卿の書と、精神的格闘の果てに「体当たりでどっぷりと一文字大きく書いて、ようやく匹敵する力が出た」と、有一自身も語っている。そうして有一は顔真卿から自由になり、一文字を書き続けていったのです。
今回はちいさな文字が多く集まりましたのでお楽しみです。
うつわ菜の花でお会いしましょう。
菜の花店主・たかはしたいいち