熊谷幸治の縄文土器
2021.10.16〜10.24
11:00〜18:00
作家在廊日 16日 24日
20日(水)定休
僕は「和菓子菜の花」を立ち上げてギャラリーをやってきた人間です。
和というものにすごく力を入れてきたつもりでいたのですが、熊谷幸治さんに「和とはなごむことですね。」と言われてはっとした。
熊谷さんは写真では黒田泰蔵の白磁を見たことはあったらしい。先日箱根菜の花展示室で初めて現物を見て、緊張感もあるが和む作品だと言われた。
ろくろの跡を消しているのだと認識していたが、ろくろの跡が残り加工していないとわかってびっくりしたそうだ。そこにものをつくる時の真っ直ぐな人間性を感じたという。道具とアートという問題に対して答えを円筒に出された。そうやって作り手の重圧を突破した人、そんな人はいないと。
黒田さんの白磁を見て、そう言ってもらえたのも、僕としてはとてもうれしかった。そして、話は冒頭の和菓子の〈和〉にも及んだのだった。
彼の住んでいる上野原は庭からも発掘品が出るという。たまたま火を使える所を求めて行ったというが、縄文史跡の土地に呼ばれたのだと思う。
森羅万象に神を認める古代日本の八百万の神。すべてに神が宿ると感じている状態が〈和〉だという。彼の焼く縄文土器は飯碗ともつかず、茶碗ともつかない。どちらにも使える。だが滲みやすいし、ひびも入りやすいし、割れやすい。それがいい。かつて、人が亡くなると使っていた茶碗を割ったそうである。長持ちするのが良いとされるのは、使える奴がエライ、と人間にも優劣をつけることにもつながると話していた。おもしろい。深い話である。
この人とは何度か会っていたのに、こんな話になったことはなかった。こんな話をしながら一緒に飲みたかったのに残念至極。
彼にとって縄文土器が彼の求めている生き方そのものであり、楽しくかたくなに作っている。我々の日常に失われていることを思い出しに来てください。
たかはしたいいち
吉田素子の絵画
2021.10.2〜10.10
作家在廊 2日3日10日
6日(水)定休
OPEN 11:00〜18:00
吉田素子さんの絵は、空間の捉え方がおもしろい。
ずっと今まで抽象画を描いて来られたが、ここのところ一見具象画になってきたかのように見える。ところがやっぱり、それは抽象化されているのだ。
器やテーブルは洋のモノのようだが、漆喰の白や藍などに通じる色は過去からずっと持って来た和を感じさせる。
それらは無機質なようで、そうではなく、背後に吉田さんの気配がする。
彼女は「直線と曲線の響きあう配置によって自分の思う空間を表現できれば」と、話してくれた。
僕も自由にその空間に入って行きたい。
たかはしたいいち
神林學の彫刻
2021.9.4土~9.12日
作家在廊予定4日(土)12日(日)
11:00-18:00
8日(水)定休
神林學さん、18才から彫刻を始めて今75才。僕と学年は同じである。
もうずっと前から人体の美しさ、不思議さを追い求めている。作っても作ってもどんどん無限に出てくるという。
今回のテーマは?と聞くと「そんな大それたことはないし、今自分がどういう所に立っているか、感じるものを作りたい。」と、返ってきた。
「平面と違って立体は、置く場所、見る向き、光の当たり方と影などによって変わってくる。また、見る人のその時の状況によっても変わってくるし、自由に見て感じてほしい。人は概して答えを知りたがるが、答えはいっぱいある。作品名もそれでつけたくないんだよ。」
神林さんがずっとやってきた「ワイヤーマン」のシリーズ。今回の「サイクル」の中の1体が僕は気に入った。足先で立っていながらデンとしていて、その姿勢にエネルギーを感じる。コロナ禍で元気をもらいたいという僕の願望もあるのかもしれない。
錆の有無など、一つ一つの作品の持ち味も異なる。今回は全長2センチの作品も届くという。
あなたにはどう見えるか。感じるか。どうぞお出かけください。
黒田泰蔵弟子達展
2021.8.21〜8.29 作家在廊日 21日
11:00〜18:00
25日(水)定休
黒田泰蔵さんが、2021.4.13に亡くなった。翌日には僕も駆けつけた。弟子であったメンバー達も7名集まって来ていた。しばらくして、パートナーの彬巴さんから声がかかり、黒田さんをしのぶ会を弟子展として開催することになった。
黒田さんへの思いが、皆それぞれ違っていて興味深く感じた。
ゲストとして、晩年の黒田さんの手伝い人、元玉峰館の料理人、大賀義人さんが絵で参加です。(参加作家は、高久敏士、吉田直嗣、渡辺隆之、深澤彰文、安齊賢太、藤原宏允、内田智裕 君です)
佃真吾の木工
2021.7.37〜8.8
佃さん在廊日 7/31 8/1
8/4(水)定休
11:00〜18:00
佃さんの話では、普段の仕事は使ってもらうことを念頭に置いて作っているが、今回は自発的に作ったものを送ってくれたという。コロナ禍で、ギャラリーを通してオンラインでの注文が多くなり、仕事に追われるようになった。それで余計に、自分から作りたいものを作るというところに戻ったということか。ただし、使いやすいものではないので、そんな生意気なつもりではないが、「使ってみますか?」とお客様が問われるような、堂々としたものを作っていきたいという。
以下、作品の説明をしてもらった。
三段重ねのお重の外側は杉の木のこぶみたいな所で作った。華やかな模様が好きなので使ってみた。
中は1,000年の埋もれ木の神代杉。底板は寄木にして縮んでも隙間ができにくくした。そして台は黒柿の黒い処だけを使用。
各々の段が独立しているので、食べ物に限らずとっておきの何かを見せるために並べても使える。想像してみてほしい。
蓋付きの刳りものの栗には漆をかけていない。色が肌色からくすんだ褐色へとタンニンで良い感じに変わっていく。
楕円のお盆は、いつもは底を盛り上げてふくらませているが、抉った線を出してみたかった。
多角盆は30㎝位ある。欅で作り漆を塗っている。
ツタの茶入れは、ツタの種類の中で固いしまった方を使っている。直径10㎝。蓋は小口の輪切り、花火みたいな金線が特徴で模様がおもしろい。
「木は動く。漆を塗ってからでも動く」という。佃さんは木を知りつくし、使う人の身になってどこまでもまじめに仕事をする人である。
指物など他にも様々引き出しがあるので、常に広げて良い意味でお客様を裏切って行きたいと意欲的である。
どんなものが来るか、他のものにも興味が湧いている。